第二回東莞和僑会:議事録

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第二回東莞和僑会講演会「モチベーション向上 -事例研究」

講師:佐藤実氏

講演内容 (スライドをクリックすると大きくなります)
モチベーション向上-事例研究行動科学の研究事例や実際の事例を通して,従業員のモチベーションを上げる方法について考える

モチベーションは自律性と熟達モチベーションを自律性と熟達の切り口で解説する.

東日本大震災東日本大震災によって被災地は壊滅的な打撃を受けたが,決して屈することなく復興に向けて努力を積み重ねている.

こけたら立ちなはれ,立ったら歩きなはれ松下幸之助翁が言ったように「こけたら立ちなはれ,立ったら歩きなはれ」の精神が必要だ.

企業の使命このような日本にピンチに際し,企業の使命は利益を出し納税することだ.

利益一辺倒・粉飾決算しかし日本の企業は「利益第一主義」に陥り,ライブドア,カネボウ,日興コーディアルなど粉飾決算をする企業がある.

利益一辺倒・経費削減また「利益第一主義」に陥り三菱自動車,雪印,不二家のように品質と利益をトレードオフするような経営が行われている.

大企業病の発症このような経営の荒廃が,日本人の活力を奪い,年々鬱病患者,自殺者は増加している.

警告・荒廃した社会日本は,世界の中で自殺者の人口比率が高い国家となっている.

日本の道徳日本は,東日本大地震で世界中が賞賛したように元々すばらしい道徳を持った国家だ.

最初に習った日本語日本に移住した韓国人の子供が幼稚園で最初に憶えた言葉は「順番」だったそうだ.日本では,列を作って並ぶということを幼少の頃より,遊びの中で教え込まれている.

日本の道徳渋滞の中でも,皆が交通マナーを守る.食堂で地震に被災した青年は,非難するため逃げ出したが,地震が収まった後代金を支払うために戻ってきた.
困難な問題を解決するだけではなく,日本人が示した連帯感に復興を可能にするモチベーションを感じる.

モチベーション向上では本題のモチベーション向上の事例に入る.

幼稚園児の行動これはある行動科学学者が,幼稚園児に対して行った研究事例だ.
お絵かきが大好きな幼稚園児を三つのグループに分け,
それぞれ


お絵かきと報酬の実験
・絵を描けばご褒美がもらえることを伝え,ご褒美を与えた.
・ご褒美のことは知らせなかったが,絵を描けばご褒美を与えた.
・ご褒美は知らせず,絵を描いてもご褒美を与えなかった.

仕事と報酬企業の場合の成果と報酬の関係と同じだ.
では,幼稚園児の実験の結果はどうなったのだろうか?

幼稚園児の変化実は,ご褒美がもらえることを聞かされ,ご褒美をもらっていたグループが,絵を描かなくなってしまったのだ.

絵を描かなくなった最もモチベーションが高いと思われるグループが,絵を描かなくなってしまった理由は何であろうか?

遊びと仕事幼稚園児たちは,「絵を描くことが楽しい」というモチベーションで絵を描いていた.しかし「ご褒美」という報酬が発生したとたんに,遊びは仕事に変質してしまったのだ.

信賞必罰信賞必罰という手法は,
良い行為を強化するために褒賞を与える
悪い行いを減らすために罰を与える
というマネジメント法である.

従来のモチベーション向上策従来のモチベーション向上策として,改善提案,皆勤,出来高などに褒賞が与えられていた.

中国の法制度中国の法律では,下記高温手当て,有給休暇の買取などが法律で決められている.

報酬の扱われ方このような褒賞の使われ方は,モチベーションを生まない.単なる給与の上乗せにしかなっていない.

モチベーション要因 過去と未来それは人々の欲求のレベルが変わってきているからだ.

モチベーションの本質しなければならないこと(仕事)にはモチベーションが上がらない.しなくても良いのにすること(遊び)にはモチベーションが上がる.

自律性つまり報酬よりは,しなくても良いのに自らやるという「自律性」がモチベーションを向上させるスイッチになっている.

持続的効果インセンティブなどモチベーションを上げる外発的動機付けには,一時的な効果しかない.一方共感的理解のような内発的動機付けは,持続的効果を持つ.

芸術家の創造プロセス芸術家の創造プロセスを考えてみよう.

注文作品と自主制作品注文を受けて制作したものは創造性に劣る.
自主製作は,夜通しでも制作に取り組める.

注文作品と自主制作品この結果は,幼稚園児の実験と同じ結果が得られた.報酬というインセンティブが創造性を失わせている.注文を受けた制作では,右脳が全く働かず,創造力が低下してしまう.

コールセンターの事例コールセンターの事例は,どのような働き方がモチベーションを上げるのか示唆的な事例だ.
顧客からの電話を処理するオペレータは,皆モチベーションが低く,離職率は年間35~100%にも上る.

コールセンターの環境狭いデスクはパーテーションで囲まれ,職場の連帯感はない.
顧客からの電話は,クレームばかりで,毎日気が滅入る.しかし笑顔で受け答えをしなければならない.

コールセンターの改革このコールセンターはこの状況を改革するために,在宅勤務に切り替えた.

コールセンターの改革その結果オペレータは「自律性」を手に入れモチベーションが上がり,オペレータの顧客に対する対応が飛躍的に改善された.

自律性がコールセンターを改革最終的には会社の業績が上がり,優秀な人材が集まるようになった.

ポストイットの誕生秘話3Mの元社長・ウィリアム・マックナイトは「優秀な人を雇ったら,あとは好きにさせること」という信条を持っていた.
その信条に裏付けたれた経営方針が,従業員のモチベーションを高め,幾つものイノベーションを起こしている.

3Mの15%ルール3Mには15%ルールがある.それは勤務時間の15%は自らのテーマで研究しても良いというルールだ.このルールにより3Mの研究者は自律性を手に入れモチベーションを上げて仕事に取り組む.そんな中で生まれたのがポスト・イットだ.
グーグル社も同様に一週間のうち1日は,主要業務と違うテーマに取り組むように推奨している.

モチベーションはエンジン遊び,創造性,自律性はモチベーションを引き出す.しかし信賞必罰や報酬による方法ではそのモチベーションを継続させることは困難だ.

モチベーションのなぞモチベーションは社会に出て歳をとるにつれて下がってくる.それは社会が「統制-従順」を求めるからだ.「統制-従順」の反対は「自律-関与・絆」だ.

動機付け衛生理論ハーズ・バーグの「動機付け衛生理論」によると,不満足因子に手を打ってもモチベーションは向上しない.ただ不満が解消されるだけだ.満足因子に手を打つことがモチベーション向上に効果がある.
満足因子の中の「評価」に対し,佐藤氏が手を打ち成果を出した事例を次に紹介する.

360度評価通常従業員の考課は,年に一度か二度,上司によって行われる.360度評価とは,上司だけではなく,関連部署,部下,同僚の評価を受けるようにしたものだ.通常評価の公正・公平性を目指して行われるが,佐藤氏はモチベーション向上に効果があるはずであると,毎月実施した.

評価と行動変容この図はある従業員の360度評価点の変遷である.縦軸が360度評価点,横軸は佐藤氏が評価したY型人間度X型人間度の評価点だ.
この従業員は360度評価を開始して徐々に評価点を落としてゆく,それに伴い彼の行動はX型に移行している.

ある従業員の訴え3回目の評価後に,彼は360度評価に対する不満と,不信を綴ったメールを社長である佐藤氏とほぼ全社員に宛てて発信した.佐藤氏はそのメールを無視していた.

ある従業員の評価と行動変容4回目の評価で更に点数を落とした時に,佐藤氏は彼にプロジェクトの役割を与えた.その結果彼の評価は5回目,6回目と上昇した.

ある従業員からの陳謝そして彼はまた全従業員に謝罪のメールを配信した.彼は360度評価を通して,多くのことを学び,成長することが出来た.その後彼はモチベーションを下げることなく仕事に取り組んでいる.

北京オリンピック次に北京オリンピックの事例を見る.

北京オリンピック開幕式開幕式のセレモニーはすばらしい感動を与え,翌日から選手達は人体能力の限界を超える活躍で感動を私達に与えてくれた.

中国の目覚しい活躍中国選手の活躍は目覚しく常勝アメリカを凌駕し金メダル獲得数第一位となった.

熟達この偉業達成は,中国が13億の人口を持っているからできたわけではない.それぞれの選手,コーチがたゆまぬ努力をした結果だ.これらの運動能力は,天賦の才能ではなく,10年以上にわたる繰り返し続けられる訓練によって開発されたものだ.価値あることを上達させたい,という「熟達」欲求がその努力を継続させた.

熟達は漸近線この「熟達」がモチベーションのもうひとつのスイッチだ.達成できそうでできない漸近線を登りつめて行くことが熟達であり,到達することよりも追求することに魅力がある.この熟達を手に入れるプロセスがモチベーションを引き出す.

画家・ポールセザンヌ近代絵画の父・ポール・セザンヌは生涯一貫して自分の最高作品を描こうとし続けた.この熟達漸近線の追求が,彼に最高作品を書くモチベーションを与え続けた.

ゴルファー・タイガーウッズゴルフ界の怪物・タイガー・ウッズはどんな素晴らしい成績でプレーを終えても,「自分はもっと上達できる,上達しなくてはいけない」と試合後に語る.しかし彼は,決してそこには到達出来ないということを知っている.3度もグランドスラムを達成するという奇跡を起こしても,それでも熟達は常にタイガーの手の届かぬところにあり,彼はそれを追求しているのだ.

熟達は何処に私達の身近にそうした人がいるはずだ.金メダルを取ることはないが,それと同等の努力を惜しみなく発揮する人がいるはずだ.

熟達は何処にしかし,その忍耐強い努力を評価する事無く見過ごされているのであれば,その忍耐という輝きの炎は,誰の助けを得られることなく,何時の日か,静かに消えていく.金メダルが欲しければ買ってくればいい.手に入れることは可能だ.しかし,私達に必要なのは,失ってはならないものは,熟達へ漸近する行為だ.それがモチベーションだ.

モチベーションは熟達からアスリートは限界に挑戦する.画家は最高作品を描くために日々成長を目指す.タイガー・ウッズは一歩前進の精神で漸近線へ向かって努力する.熟達へ向かっている人は,私達の身近に存在する.そういった貴重な行為を,私達は見逃してはならない.


モチベーション事例本日はモチベーションを,自律と熟達という側面から事例を紹介した.

モチベーションの構造これらの事例から,経営に役立つ要素が見えてくるはずだ.

研修と行動変容多くの企業が社内研修に取り組んでいるが,知識や技能を与えても会社の業績には何も貢献しない.それを行動に移さなければ成果は出ない.

行動変容研修が少ないそのような行動変容を促進する研修が少ない.

智慧行動変容研修-1以下は佐藤氏が屋外で実施している,行動変容を狙った「智慧行動研修」だ.

智慧行動変容研修-2

智慧行動変容研修-3

智慧行動変容研修-4

智慧行動変容研修-5

智慧行動変容研修-6

智慧行動変容研修-7

モチベーション向上ー事例研究(完)

質疑応答
360度評価の説明の中で,従業員のモチベーションを上げたプロジェクトとは?

工場移転のお別れパーティで,全員で詩を朗読するプログラムを任せた.「自分たちの絆で品質を保ってきた.深圳にはこの絆を持ってゆこう」 という内容の詩を全員で朗読をした.

360度評価の評価者訓練はどのようにされたか?

まずは評価基準を作り研修した.その後評価のたびに,正しくないと思われる評価を例題とし再研修.その後評価とその評価をした被評価者の行動事例をあわせて書くようにルールを変え,間違いを指導しやすくした.それらの事例集を作り,4回くらい繰り返したら,ほぼ満足の行く評価が出来るようになった.

私の工場では賞罰を一切止めた.優秀従業員に50元出していたが,毎月同じ人にあげることになった.

佐藤氏が経営していた工場では,罰金制度はない.その代わり「貢献賞」という制度を作った.ルール違反をしなければ貢献賞がもらえる.3ヶ月継続するごとに賞金が上がり,最高200元までになる.こうすることでルールを破るものはいなくなった.詳しい内容はこちら人財育成勉強会

250人しかいない工場だが,それでも360度評価をしたり一人ひとり面接することは不可能.

250人と面接するのは不可能でも10人の部長さんと面接することは可能.出来るところから始めてみるのも手.

中国に赴任して初めて部下が出来た.年度末の効果に不満が多い.

年度末にだけやるから,評価者の評価内容も曖昧になる,被評価者も忘れていることがある.そのため不満が出る.毎日とは言わないが,一月に一度くらい評価をしてみてはどうか.正しく評価されることがモチベーションを上げることにもなる.

懇親会
有志10名で講師の佐藤先生を囲んで,会場近くの日本食レストランにて懇親会を実施した.

懇親会では,更に突っ込んだ議論が行われ充実した2時間だった.

個人的には,「毎回注意しているのに,同じミスを繰り返すのを何とかしたい」というお悩みをお持ちの経営者様の問題を,参加者で対策を一緒に検討したのが,有意義と感じた.

今後も,このような相互に高めあう議論が出来る勉強会にしたいと考えている.

第二回東莞和僑会講演会

公演中の佐藤実先生

講師の佐藤実先生を囲んで記念写真

文責:林徹彦

林@クオリティマインド の紹介

中国広東省にて品質改善・経営革新コンサルをしています.
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